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I聖地巡礼や旅行文化を考える

人はなぜ旅に出るのか?






社寺参拝からリゾートを経て


 江戸時代になると庶民にも旅行が流行し、聖地巡礼ともいえる社寺への参拝は盛んに行われました。江戸からは東海道を歩いて、遠く伊勢神宮を目指した「お伊勢参り」もありましたが、より身近な目的地としては大山や成田山などが選ばれました。霊山として古くから信仰を集めていた大山の場合はその立地から行楽的な要素も含まれ、大山〜江の島〜鎌倉と、今でも通用する周遊ルートが形成されていたようです。

 大正から昭和初期にかけては観光ブームも到来。旅行に対する社会的な関心はさらに加速し、鉄道も参拝客輸送を目的に開業・延伸された路線が多く、例えば京成線は柴又帝釈天や成田山を目指し、京急線は川崎大師、東武線は西新井大師や日光東照宮、小田急線は大山や江の島、京王線は高尾山へのアクセスを担うことになりました。

 戦後の高度経済成長を経て国民の暮らしに余裕が出てくると、ホテルや遊園地、スキー場、テーマパークなどのリゾート開発が積極的に行われ、例えば首都圏では箱根や伊豆、軽井沢など、民鉄各社は時代に乗って大規模プロジェクトを手掛けていきます。昭和末期の国鉄分割民営化以降は、バブル景気に後押しされてJR各社も積極的な投資を進めましたが、バブル崩壊により縮小。少子高齢化やIT社会の到来などにより、旅行に対する国民の価値観やスタイルは大きく変わりつつあります。



オンラインで満たされないこと


 インターネットが身近な環境になった今、場所によらず様々な情報を入手することが可能で、特にSNSでは利用者の体験に基づいた旬の情報を瞬時に得ることができます。グーグルマップのストリートビューを見れば、現地へ行かなくても街歩きを楽しめます。各地の美味しいグルメは、クリックすればお取り寄せできる時代です。

 2020年の新型コロナウイルス感染症拡大は、世界中で行動を制限される事態となり、人と会えない、行きたい場所に行けない、そんなもどかしい我慢を強いられることになりました。テレワークが推進され、オンラインでコミュニケーションをとる機会を持った人も少なくないと思いますが、一方でオンラインの限界を感じた人もいるでしょう。

 人と会いたい、どこかへ行きたい、その気持ちはオンラインですべて満たすことができないことを証明しています。どうしても対面しなければならない時はあるのです。これは亡くなった大切な故人も同じ。コロナ禍ではオンライン墓参りというスタイルも登場したようですが、リアルなお墓参りで得られるような充足感は持てたのでしょうか? 墓石に触れたり、線香の香りを感じること。全身で感じるものがあるからこそ、お墓参りで清々しい気持ちになれるのだと思います。



旅行文化と家族の聖地


 故人の供養をするためのお墓参りですが、お墓を家族の聖地と考えれば、お墓参りも旅行の一つだと言えます。これは、江戸時代に流行した社寺への参拝から庶民の旅行文化が花開いた歴史を見れば納得できます。

 日本人は古くから社寺巡りを好んでいました。これが根底にあるのか、生活の中から宗教への意識が薄まってきている現代においても、御朱印ブームに見られるように、我々はどこかで精神的なものを満たしてくれる聖域に惹かれるのかもしれません。社寺の境内に足を踏み入れたときの心の変化、身を清められるような気持ちは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。

 聖地には様々ありますが、家族専用の聖地と言えるのがお墓。承継者がいるのに「子供に負担をかけたくないから」と言って、ご先祖様の大切な遺骨を合葬施設へ移してお墓を壊してしまうこと。これを終活だと言って自信を持ってやってしまう人がいます。

 お墓を持つことは時代遅れで、ご先祖様の遺骨を手放して供養を寺に任せてしまうことは時代に合っているのでしょうか? 精神的なよりどころを奪われてしまう子や孫はどうなるのでしょうか? 日本人の心はどこへ向かっているのでしょうか? 少子化と合わせて日本の危機だと思います。

麓の田園から眺める大山

神奈川県の大山は古くから信仰を集める霊山だが、江戸時代には庶民の間でも「大山詣り」が流行。周辺の江の島観光と一緒に訪れる人も多く、聖地巡礼と行楽の要素を併せ持った旅が行なわれた。現在は麓の小田急線伊勢原駅から、バスとケーブルカーを乗り継いで気軽にアクセスできる。
 
旧街道に残る道標

茨城県取手市内の旧陸前浜街道(水戸街道)沿いに残る道標。石に刻まれた「水戸十ハ里」の文字が確認できる。五街道や脇往還と呼ばれる道路網が江戸時代に整備され、明治以降は鉄道、そして戦後の新幹線・高速道路へと、交通が飛躍的な進歩を遂げる中で旅行文化は育まれた。


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